アーキテクト思考
◆本の概要
著者:細谷功、坂田幸樹
ページ数:342ページ
第1刷発行:2021年9月28日
◆アーキテクト思考とは
詳細は後で述べますが、アーキテクト思考は「抽象化してゼロベースで全体構想する思考力」です。
アーキテクト思考は全体構想が必要となる全ての場面で活用できます。
例えば、
・新規事業やサービスの全体構想
・M&A後の新会社の全体構想
・新しく立ち上げるコミュニティの全体構想
・イベントの全体構想
・企画書の全体構想
・「新しい働き方」の全体構想
(前例踏襲で何かを始める場面以外で活用できます。)
一般的にビジネスの世界ではコラボやチームワークが重要と言われますが、
アーキテクト思考は一人で考えることが求められます。
10人で考えたアイデアではそれぞれの利害関係を含み真の目的を達成にするに至りません。
抽象的な美しさとはいかにシンプルに複雑な事象を表現できるかということです。
◆なぜアーキテクト思考が必要なのか
アーキテクト思考とは抽象度の高い全体構想を作り上げるための思考力です。
なぜこの思考力が重要なのかというと、不確実性が高いVUCAの時代のおいては「問題解決よりも問題発見が重要」となるためです。
例えば、テスラは従来の自動車産業とは根本的に考え方を変えて、ソフトウェアをアップデートしながら車両性能を向上させ続けることができます。
従来の自動車業界のビジネスモデルを改善する考え方(問題解決型思考)からは出てこない発想です。
他にも、InstagramやFacebookというアイデアも根本的に考え方を変える問題発見型思考でないと出てきません。
現在日本は人口減少という危機的状況に立たされています。
このまま努力しても生き残っていくことはできません。
問題を再定義して勝てる場を見つけることが何よりも重要です。
かつて日本列島改造論を掲げた田中角栄や廃藩置県を構想した西郷隆盛、大久保利通らのような発想が必要です。
◆全体構想の5つのステップ
STEP0 バイアスをリセットする
ここでのポイントは既存の枠や常識に囚われずに考えるです。
最も避けたい非アーキテクト思考は「誰かが決めた分類を疑わずにそのまま利用する」ことです。
例えば店舗販売のようなビジネスであれば「どの棚で売ろうか?」ではなく、
店の配置図そのものから白紙で構想し直してしまおうという発想です。
ここでのゴールは頭の中に白紙を用意することです。
STEP1 具体的事象を観察する
ここでのポイントは情報をあくまでも単なるファクトとして収集し、その解釈を他人や世間の常識に委ねないということです。
ここで避けたい非アーキテクト思考の情報収集の仕方として、顧客にどんな商品やサービスが欲しいかと尋ねることが挙げられます。
その理由を考える上で2つの言葉を引用します。
「もし、顧客に何が欲しいか尋ねたら『もっと速い馬が欲しい』と答えただろう」(ヘンリー・フォード)
「人は形にして見せてもらうまで、自分は何が欲しいかわからないものだ」(スティーブ・ジョブズ)
このポイントを意識して対象となる市場や顧客、社会を観察して情報収集を行っていきます。
STEP2 全体俯瞰のための座標軸を設定する(当該ビジネスの本質はどこかを見極める)
様々な視点の軸はビジネス環境を見る上である程度定型化できます。
SWOT分析、PEST分析、マーケティングの4Pなどが該当します。
ここで重要なポイントはそのようなフレームワークを活用することで、
全体像の中での当該ビジネスの「濃淡」、つまり重要度が高いところと低いところを見極めることです。
当該ビジネスのボトルネックといってもいいかもしれません。
例えば、成功要因が顧客との定常的な関係構築なのか、新規顧客の獲得率なのか、サプライヤーとの独占契約なのか、特許の取得数なのかなどです。
「ここを押さえれば後は自動的についてくる」といったビジネスの要の部分を構造的に読み解くのが、
フレームワークを用いて全体を俯瞰することの意味合いです。
STEP3 構造抽出・モデル化(どういう点がビジネスの成功に繋がるのか?)
当該ビジネスを抽象化して重要成功要因(CSF)を抽出します。
抽象化でとらえるべき様々なビジネスの「要するにこのビジネスは…」というCSFには様々な側面があります。
例えば、以下のようなものが考えられます。
①業界構造特性
顧客やサプライヤー、競合他社との関係性です。
業界構造を把握するフレームワークにファイブフォース分析があります。
②製品特性
例えば、プロダクトライフサイクルは汎用的に使える概念です。
③顧客特性
いわゆる顧客セグメンテーションというのが各企業が顧客を見る時の「軸」になります。
④購買特性
最も注目すべきは先の関係性でも述べたような顧客とサプライヤーの関係性です。
それを単なる強弱の関係とみるのではなく、なぜそのような力関係が発生するのかをもう少し考察してみれば、そこに様々な特性が見えてきます。
例えば、サプライヤー側の寡占度やパーツの希少性といったことです。
⑤経営管理特性
経営管理上の抽象度の高い視点としては、コントロールする変数の数が挙げられます。
コストのみが管理対象のコストセンター、売上とコストによる利益という変数が2つのプロフィットセンター、
それに時間軸という変数が加わったインベストメントセンターといった具合です。
他にもコスト構造、複数事業の多様性など、経営管理上支配的となる軸を探すことで、これまでとは異なる経営管理の考え方を導くことも可能です。
⑥人事管理特性
会社は成長に従って人材の質も変化するとともに管理や育成の仕方も必然的に変わってきます。
人事の世界でいう軸の例として挙げられるのは「年功序列」です。
長年日本企業は年功序列と新卒一括採用という仕組みとセットで人事管理や評価が支配されてきました。
STEP4 構想案を具体化する
抽出した構造やCSFを基にして具体的な肉付けのための発想をするステップです。
抽出された抽象度の高い成功要因やビジネスの構造を基にして、様々な事例を基に新たな構想を具体化していきます。
あくまでもセロベースで全体構想するのは、いまの状態だと解決できない課題を解決するためです。
軸の抽出例
「新しい球技を考えてください」
→・11人でプレイする →プレイヤーの数
・手を使えない →手の使用の可否
・2チーム間で勝敗を決する →チーム数、勝敗あり
このように、事象が持つ各属性をばらし、そこから軸に拡大し、それらの軸を組み合わせることで平面や立体という場を構成するという形で、
抽象化によって新たな空間を定義していくことが可能になります。
◆ビジネスのボトルネックを発見するためのフレームワーク
○バリューチェーン分析
バリューチェーンの基本は、企画・製造・販売です。
さらに製造を分割すると調達・加工・組立となります。
下図のように各プロセス毎に価値が付加されていることから、企業は調達した原料よりも高い価格で顧客に製品を販売できるのです。

シンガポールの寿司屋の価格が日本の2~3倍なのは、原価が高いからではありません。
「顧客がその価値を支払うから」です。
いくらコストがかかっている商品であっても、顧客がその価値を認めなければ高い価格を払うことはありません。
○経営資源
バリューチェーン上のボトルネックを把握した次は、それがヒト・モノ・カネ・情報のうちの何に起因しているのを把握する必用があります。
ヒト:人材
モノ:工場、施設、在庫、ITシステム
カネ:資金
情報:情報、技術、ノウハウ
自社の経営資源の何がボトルネックとなっているのかを考えます。
解決策のオプションを整理する
物事の解決策は1つとは限りません。
最適な解決策を洗い出すには、解決策の幅出しをすることが重要です。
そのうえで、バリューチェーン・経営資源マトリクスを最大活用し、解決策を整理する必用があります。
売上や市場シェア拡大だけが経営ではない
生産量を拡大することで利益率向上が見込める事業もあれば、
規模ではなく稼働率を向上させることで利益率が高まる事業もあります。
◆アーキテクト思考を身に付けるために
ニュースを観て得た知識を覚えるだけでは単なる物知りになるだけです。
1日1回アウトプットすることから始めてみましょう。
情報をインプットし、加工し、アウトプットする、この3ステップを習慣化するのです。
ブログでもSNSでも日記でも何でもOKです。
皆さんの周りにはこの思考をできる方はどれくらいいるでしょうか?
恐らく多くはないはずです。
人生100年時代に安心して生活を送るためには必要な能力の1つはアーキテクト思考ではないでしょうか。