• 思考法・スキル

フローとストック

◆本の概要

著者:細谷功
ページ数:237ページ
第1刷発行:2024年4月22日

◆本書の目的

「世の中の具体的な個別の事象を抽象度を上げて連続的に捉えることで、その変化のメカニズムからさまざまな事象を説明し、次に起きる出来事の予測を可能にする」ということです。

◆CAFSマトリックス


シンプルに表現すると、「思考がフローで知識がストック」であるという点で、マトリックスの左半分が思考の領域、右半分が知識の領域という関係になります。
左下の象限がスタートで、なんの解釈も入っていないありのままの状態。(左下の象限)
ここから分類やカテゴリー化によって、その共通点やパターンを認識して体系化、理論家、ルール化していこうというのが抽象化です。
仮説を考えながら、実験やデータ収集などによって検証していく、そのときの仮説が左上の「フローとしての抽象」です。(左上の象限)
やがて、それらの仮説はある程度検証されたり習慣化されたりしていくことで、そのこで生き残った仮説が、いずれは明文化されたり理論化されたりというかたちで知識やルールとして、右上の「ストックとしての抽象」へと変化していきます。(右上の象限)
そして、その知識やルールを用いて世の中を見たりまとめたりすることで世界が動いていく、そのような「ルールつきの現実世界」が「ストックとしての具体」になるのです。(右下の象限)
その意味では、人間社会における「知識」とは、「抽象化」という「パッケージング技術」が生み出した「パッケージ製品」だといえます。

よくいわれる「手段の目的化」は、「フローとしての抽象」が右隣の「ストックとしての抽象」に転換するときの起きるのです。
大多数の人はストック型思考回路であるため、そこに見えない固定概念を埋め込むことで、特定の人間の中で共同幻想とでもいうべき常識が共有され、それが人々を集団で動かす必要のあるときに絶大な威力を発揮します。
そこで「歪み」が発生し、時代の変化とともに運用が硬直化してくるとさまざまな軋轢が生まれるが、それでも常にルールが絶対だ、というストック型の人も一定数存在する。
いわゆるルール型人間は、事実が見えていない、あるいは抽象化能力が乏しい。

小さな子供の学びは「具体→抽象」という上向きのもので、対する大人の学びは「抽象→具体」という下向きのものである。
抽象化能力を身に付けると、上向きのやり方が効率的ではないことを理解し、徐々に教科書と文法を使った下向きの学習を選択していく。

理解が難しい芸術について専門性のない世の中の多くの人たちは、その評価を一部の専門家の評価に委ねます。こうして固定化された評価が確立した世界における多数の作品群が「ストックとしての具体」となります。ここでは「ストックとしての抽象」によって醸成された「〇〇の作品は素晴らしい」という先入観が、世界を協力に支配します。
このような見方をする人が芸術では圧倒的に多いために、「理解や評価が万人に難しいものは一部に人気が集中する」という構図になる。

○マトリックスと歪みのメカニズム

「ストックとしての具体」のおける「歪み」には2つの種類がある。

・抽象化が宿命的にもっている単純化による歪み

抽象化とは都合の良い特徴だけを切り取ることなので、そもそも何かしらの歪みが生じる。
たとえば、何かの補助金を出す場合、「ほんとうに補助金を必要としている人」と「なくてもなんとかなる人」の境目が明確に分けられればよいが、そのような線引きは極めて難しい。

・時間の流れとともの生じる歪み

時間経過とともに過去は機能していた線引きが機能しなくなっていく。この歪みに目をつけ、新たな枠組みを再定義することで歪みを解消し次のフェーズへと世の中を動かしていく政治家や起業家、アスリート、作家などがあらゆるジャンルに存在する。