確立思考の戦略論 どうすれば売上は増えるのか
◆本の概要
著者:森岡毅、今西聖貴
ページ数:372ページ
第1刷発行:2025年1月28日
◆本書のテーマ
消費者に選ばれる確率、つまりプリファレンスをどうやって増やすのか
◆脳はブランドで選んでいる
売れるためには、プロダクトよりもブランドが重要である。
プロダクトは大切だがブランドをつくるための手段でしかない。
なぜかというと、消費者の脳は、プロダクトよりも先にブランドを選択する構造になっているから。別の言い方をすると、ブランドが選ばれないことには消費者の脳はプロダクトには辿り着かない。
脳の選択までのフロー
・重要性でふるにかける
・できるだけ大きなところから選択しようとする
・ランダムに選択する
その人にとって重要でない情報は遮断される。
「カテゴリーの選択」→「ブランドの選択」→「プロダクトの選択」
カテゴリ―が選ばれる必然が、そのままブランド間の競争を有利にするブランドを設計する勝ち筋を考える。
◆マーケティングとブランディング
マーケティング戦略においてリソースを割くべき焦点は以下の3つ。
最大のポテンシャルを秘めているのは消費者のプリファレンス。プリファレンスで決まる最大ポテンシャルを認知率と配荷率で制限する構造となっている。
ブランディングとは要するに、物理的かつ精神的なavaliability(手に入れられる度合い)を高めること。
WHO/WHAT/HOWを設定したときに、つまりコンセプトを設定したときに、そのブランドのavaliabilityの最大ポテンシャルは決まってしまう。
◆重心を衝け
ある目的の実現に対して、必要条件A、必要条件B、必要条件Cがあったとして、AかつBかつCを満たす要素が「重心」である可能性が高い。
ビジネスにおいて察際に大きな差が生まれるのは、その重心にリソースを極端に集中させられるか。自身の共同体にその集中を説得して実行させることができないマーケターがほとんど。
ブランド戦略の重心

テーマパークの場合、
人はなぜテーマパークへ行くのか?テーマパークの年代別の来場確立と、テストステロンの年代別の分泌量のかたちは重なっている。
休日の過ごし方はたくさんある中でなぜテーマパークなのか?
消費者がテーマパークを選択する価値軸どこなのか?
様々な価値があるがもっとも特徴的なものは他のレジャー選択肢に比べて「楽に、失敗なく楽しめる」という価値です。
本質的にプリファレンスを決定づけるのは、WHOの大きさだけではなく、WHATとの組み合わせによるMの大きさです。WHOに対して「本質的に何の価値を売っているのか?」という便益設定(WHAT)によって生まれる、消費者の脳内ポジショニングによってプリファレンスが左右されれている。
◆コンセプト
プリファレンスの最大変数はコンセプト
世界は認識によってつくられている。実際にどうなのかではなく、実際にどうだと人が認識したのか?それが人の世界です。
あまり重要ではない対象については脳はコンセプト形成(意味づけ)をさぼろうとするくせがある。したがって、新しい仕事(新たな知覚)が飛び込んできた時に、その対象が自分にとってどのくらい重要かを最初に判断しようとする。
自分にとって重要かどうか、脳が働いてコンセプトをつくるためにはこれが第一関門となる。
例えば、環境問題が若い世代の方が意識が高いのは、若い世代にとっての重要度が高いため。
意味づけの差が実際に人が実感する幸福感(=価値)の差なのです。
プレゼントの価値はもらったものではなく、想って、悩んで、一生懸命さがして、苦労してようやく手にいれてくれた物語。あなたの頭の中にその意味付け、つまり「コンセプト」がある場合とない場合、幸福感が大きく異なる。
予めマーケティングコンセプトを刷り込むことによって、その価値をより強く実感させることができる。これをコンセプチュアル・セル効果という。
人間の知覚は認識によって大きなバイアスを受ける。例えば、プラシーボ効果
価値は感じるものよりも信じるもの
マーケティングコンセプトはブランドエクイティ構築のための最大のドライバー
ブランドエクイティ
あるブランドに対して消費者が頭の中で想起するイメージ。「メルセデスベンツ」というブランドを考えた時頭の中にイメージの1つ1つがブランドエクイティ。
戦略エクイティ
ブランドエクイティの最も大切な一部分。人々がブランドを選ぶときの核となる理由と一致していなければなりません。住宅メーカーであれば、安全性(構造強度)や、夢を叶える設計能力など
マーケターが見るべきは顧客ではなく消費者である。
注力すべきは目的とする「戦略エクイティ」とその戦略エクイティを構築するための「マーケティングコンセプト」です。
1つ1つの新商品が、そのブランドの何をどう強化するのか?
親ブランドがより強くならないのであれば、消費者全体から来店客数を大きく増やしていくこと(=新規顧客の獲得)にはつながりにくい。なぜなら、消費者の脳は、パンを選択する前に、パンやを選択しなくてはならないからです。
ブランドの設計図

何のブランド(=消費者価値)を自分たちは消費者の脳内に構築しようとしているのか?
そのブランドをつくるためには自分の役割は設計図の中のどのミッションを担っていて、自分のどんな働きが重要なのかをしっかりと認識できる状態にせねばならないのです。
◆強いコンセプトは消費者理解が全て
カテゴリーの価値がどの本能に刺さっているのかを知ることは、ブランドのあるべきWHATの核心を知ることにほぼ等しい。
脳内記号を本能めがけてたどっていく方法
丸亀製麺ブランドのプリファレンスを伸ばすために「うどん」「外食」などの上位カテゴリーに着目し、それらカテゴリ―が消費者の脳内でどのような記号性を持つかを調査した。
「スパゲティ」と聞くと、おしゃれ、晴の日、デート、「うどん」と聞くと、なつかしいや、やさしい、ほっとする、あたたかみのあるといった内的な安心感に想起が集中した。
その理由は探り、結果として「うどん」は尽くされる安心感を欲する本能に刺さっている。より刺さるように丸亀製麺のブランド設計した。
◆強いマーケティングコンセプトをつくる3つの要点
1.本能にぶっさせ
マーケティングコンセプトが成功しているとき、つまり脳によって高い価値がと判断されて購入に結びついているとき、脳の中の3つのチェックポイントを順番にクリアしている。
システム1:直観的で速い判断、95%はこちらで判断
・重要性の関門:自分にとって重要か
・好意度の関門:好きか、嫌いか
・納得性の関門:ほんとうに大丈夫か
「重要だ!」→「好きだ!」→「なるほど!」
重要でない情報は遮断される
瞬間的に価値ある便益として認識させるように、魅力あるベネフィットアーティキュレーション(便益を明確に言い当てた定義)になっていることがすべて。簡単にいうとこんなもんかという「期待を上回る」こと。
判断が大きい、何かがひっかかるときにはシステム2が起動する。
システム2:典型的なものは以下の3つ
・便益は本当に手に入るのか
・価格は妥当なのか
・他のオプションと比べても良い選択なのか
2.文脈を操作せよ
人間は文脈で判断する生き物。ある事実や特徴など、情報を脳がどのように価値判断するかは、実は設定された文脈によって決まっている。
例えば、除菌効果のあるウェットタオルのサンプリングをどこでやると効果的?
一般にサンプリングのKPIは受け取ってもらう、使ってもらう、商品を買ってもらう
と考えるとファーストフードのドライブスルーなど。社内は水が使えない、手づかみで食べるものなどは価値を実感してもらいやすい。
STC(Setting The Context):マーケティングコンセプトにおいて、自身の便益を有利にするために文脈を設定すること。
STCの3つの切り口
a.価値を高めるシーンを設定する(こんな問題ありませんか?など)
b.消費者のインサイト(消費者の隠れた真実)を衝く:
c.消費者の眼鏡(≒期待値)を変える
マインドオープニングインサイト(頭)
例えば、重要な事実、新情報。Xの本当の原因は実はY 知っていましたか?
老後2000万円問題など。部屋干しの嫌な臭いは実は菌が原因。
ハートオープニングインサイト(心)
ファッション、ビューティー、テーマパークなど人の情緒・感情を扱うビジネスでは効果的。
例えば教育系においては、教育は子供ためとは言いながらも、親自身の人生観や葛藤、特に深い所にある劣等感とは切っても切り離せないものがあります。いい親であると自分で思いたい、他人からも思われたい。
c:消費者の期待値を操作して文脈を設定する。脳は「これはこんなものだろう」という相場観のベンチマークをもっている。これが期待値です。期待値が高いとトライアルを取るのには有利ですが、その期待にある程度合致したプロダクト体験でないと満足度が下がり、リピートだけでなくSNS時代においては評判などがトライアルにも影響する。ブランディングとは消費者の期待マネジメントともいえる。
Focus
価値評価に有利なところに認識を誘導する。どんなこだわりの食材を、どのようにして調理して、何のポイントをお楽しみください。
Replace
期待値そのものの前提となっている文脈の設定を、自ブランドにとって都合の良いものに置き換える。西武園遊園地の古い施設を活かす。
◆脳内記号を活用せよ
マーケティングコンセプトのフォーマット
STC → 便益 →RTB(必要であれば)
システム2が発動した場合はRTBが必要。RTBを省くことによって、より便益に集中して伝えやすくなるメリットがある。
脳内記号をうまく活用することで、マーケティングコンセプトは本能に貫通しやすくなる。脳にとって低労力で情報が処理できるようになる。つまり直観的に理解しやすくなる。理解しやすいと疑念が沸きづらいのでシステム2を起こさずにすむ。
40年の停滞。日本に新しい価値が産まれない理由は、物理的にはとてもシンプル。知的労働層の大半が、新たな価値を生み出すことに日々の時間を精神力を意識的に使えていないから。