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THE TEAM 5つの法則

◆本の概要

著者:麻野耕司
ページ数:265ページ
第1刷発行:2019年4月5日

第1章 Aimの法則 旗を立てろ!

チームとして何を目標にするかによって、メンバーの思考や行動は大きく変わっていきます。
その前提に立つと
「目標を確実に達成するのが良いチームだ」
これは必ずしも間違っているわけではありませんが、それ以上に大切なことは、
目標を適切に設定するのが良いチームだ
ということである。

「どうすれば目標を達成できるか?」を考える前に、
「どのような目標を設定するのか?」を定めることに、より力を注ぐべきである。

目標設定の3分類
意義目標:日本全体のチーム力を高める
成果目標:10万部売る
行動目標:「チームの法則」を、事例を交えてわかりやすく伝える本をつくる

上にいくほどブレイクスルーが起きやすい
下にいくほどアクションが分かりやすい
どれがチームにとって適切かは、チームを構成するメンバーの能力レベル、思考力や行動力によって変わる。
このような3つの目標の特徴を理解した上で、自らのチームの目標設定を行う。
今の時代は、チームが何のために存在し、どんな影響を与えていくべきなのかという
意義目標をすべてのメンバーが意識し、自発的に行動し、成果をあげるチームづくりが求められている。

第2章 Boarding(人員選定)の法則 戦える仲間を選べ

「ビジョナリーカンパニー2」においてジム・コリンズは「誰をバスに乗せるか」が企業経営にとって最も大切なことであり、「最初に人を選び、その後に目標を選ぶ」べきであると説いた。

人が入れ替わるチームは本当に駄目なのか?
「環境の変化度合い」が小さければ、メンバー選びは入口にこだわったほうが良い。
メンバーを入れ替える必要がないため。その方がパフォーマンスが上がる。
一方で、「環境の変化度合い」が大きければ、メンバー選びは出口にこだわった方が良い。
入口のハードルを下げて、状況に応じてメンバーを入れ替えた方が良い。

チームに多様性が必要だという誤解
自己完結する仕事「人材の連携度合い」が小さければ、
似たタイプの能力を持ったメンバーを集めた方がチームの成果は高まる。

第3章 Communication(意思疎通)の法則 最高の空間をつくれ

ルールの細かさは一定以上を超えると効果が下がってしまう。
ある程度まではルールを設定し、ある程度以上はコミュニケーションで担保する、
というのがチームにおけるメンバー同士の効果的・効率的な連携におけるポイント。
「チームにコミュニケーションが多ければ多い方が良い」ではなく、
「チームのコミュニケーションは少ない方が良い」と考えるべき。

ルール設定のポイント
ルール1 ルールは増やすのか?減らすのか?(What:ルールの設定粒度)

ルール2 誰が決めるか?(Who:権限規程のルール)

ルール3 どこまで責任を負うのか?(Where:責任範囲のルール)

ルール4 何を評価するのか?(How:評価対象のルール)

ルール5 どれくらい確認するのか?(When:確認頻度のルール)

もしあなたのチームがルールをきちんと定めないまま、
日々のコミュニケーションだけでメンバー同士の連携を担保しているのだとしたら、
そこには大きな非効率が存在するはず。

相手の特徴を知らなければコミュニケーションは成立しない

・アタックタイプ(達成支配型)
自力本願でありたい、成功を収めたい、周囲に影響を与えたい、意思薄弱な状態や人への依存は避けたい
反応しやすいキーワード:勝・負、敵・味方、損・得
嬉しい言葉:すごいね

・レシーブタイプ(貢献調停型)
人の役に立ちたい、平和を保ち、葛藤を避けたい、中立的な立場でいたい、他者との戦いよりも協調を大切にしたい
反応しやすいキーワード:善・悪、正・邪、愛・憎
嬉しい言葉:ありがとう

・シンキングタイプ(論理追及型)
様々な知識を吸収したい、複雑な物事を究明したい、勢いだけで走ること・無計画な状態は避けたい
反応しやすいキーワード:審・偽、因・果、優・劣
嬉しい言葉:正しいね

・フィーリングタイプ(審美創造型)
新しいものを生み出したい、楽しいことを計画したい、自分の個性を理解されたい、平凡であること・同じことの繰り返しを避けたい
反応しやすいキーワード:美・醜、苦・楽、好・嫌
嬉しい言葉:面白いね

ポータブルスキル

どちらのスキル傾向があるのかを理解することで、相手の能力を捉えやすくなる。

・対自分力
外向的スキル⇔内向的スキル
決断力⇔忍耐力
瞬味力⇔規律力
瞬発力⇔持続力
冒険力⇔慎重力

・対人力
父性的スキル⇔母性的スキル
主張力⇔傾聴力
否定力⇔受容力
説得力⇔支援力
統率力⇔協調力

・対課題力
右脳的スキル⇔左脳的スキル
試行力⇔計画力
変革力⇔推進力
機動力⇔確動力
発想力⇔分析力

メンバーが問題に気づいていたり、問題を解決するためのアイデアを持っていたとしても、それらを心の内に秘めてしまっていることがよくある。
ネガティブな感情を排除し、積極的な発言や行動を引き出すために重要な考え方が「心理的安全性」である。

心理的安全性に支障をきたす4つの原因

・無知だと思われる不安
発言や行動が起こりにくくなる。
これを防ぐためには「率直質問機会」を提供するのが有効。
どんな質問でもOK、質問すること自体が素晴らしいという場をつくる。

・無能だと思われる不安
「こいつは大したことがないな」と思われる恐怖から消極的になってしまったり、自分の失敗をチームに隠してしまう状態。
これに対処するためには、「失敗共有機会」を設け、「失敗を恐れず、挑戦してもいいんだ」と思える環境を整備することが効果的である。
あえて失敗を共有してもらい、そこから共に学び、成長していく場をつくる。
失敗が悪ではなく、失敗を隠すことや失敗から学ばないことが良くないことだと感じてもらう。

・邪魔だと思われる不安
議論を遮ってしまうことへの恐れにより発言への積極性が損なわれてしまうことを防ぐには「発信促進機会」の設定が有効である。
時に議論を止めたとしても、意見が生まれたこと自体を良しとする風土を醸成する。

・批判的だと思われる不安
批判的だと思われることを恐れ、無思考なYESマンになるリスクがある。
「反対意見機会」を設け、人と違ってもよいのだと思える環境をつくる。

第4章 Decision(意思決定)の法則

「三人寄れば文殊の知恵」は「1人で考えるよりも、複数人で話し合った方が良いアイデアが出る」
という意味でのことわざだが、社会心理学にはこれに真っ向から反論し、複数人で集まると、不適切な意思決定をしてしまうとう説すらある。

3つの意思決定方法
独裁、多数決、合議
左にいくほど時間は短い
右にいくほど納得感が高い

合議はスピードとセット
KT法:アメリカ空軍の実際の問題解決や意思決定を研究し、優れたスタッフには職位やキャリアに関係なく、行動に移る前に共通した思考プロセスが存在することを発見した。
状況把握:SA、問題分析:PA、決定分析:DA、潜在的問題・潜在的好機分析:PPAの4つで構成される。
DAでは、合議をスピーディーにするために最初にすべきこととして、選択肢を選ぶための基準を出すことを定めている。次にやるべきことはその選択基準に優先順位をつける。そして、その選択基準を満たすであろう選択肢を複数出す。

正しい独裁はチームを幸せにする
意思決定を迫られるのはメリット51%、デメリット49%のようなケース。
だとすれば迅速に意思決定し、時間を稼ぐ方がよい。
ファーストチェス理論:「5秒で考えた手」と「30分かけて考えた手」は、実際のところ86%が同じ手なので、できる限り5秒以内に打った方がよいという考え方。

独裁者がもつべき「影響力の源泉」
「チームの意思決定の成否はリーダーの決断で決まる」
というのは間違っていないが、
「チームの意思決定の成否は、決断後のメンバーの実行度合いで決まる」
もまた真実である。
メンバーが意思決定に賛同し、実行するかどうかは「どのような意思決定なのか?」だけでなく、
「誰が意思決定者なのか?」にも影響を受ける。
その影響力の源泉はいったい何なのか?

「影響力」の5つの源泉
・専門性:すごいと思われる技術や知識をもっていること。
・返報性:ありがたいと思われる支援や関与をしていること。
・魅了性:すてきと思われる外見的・内面的魅力を有していること。
・厳格性:こわいと思われる規律や威厳を持っていること。
・一貫性:ぶれないと思われる方針や態度を持っていること。

第5章 Engagement(共感創造)の法則 力を出しきれ

超一流でもモチベーションに左右される
ここではモチベーションを「ある行動を選ぶ理由」と定義する。
とある行動を選択する以上、そこには「理由」つまり「モチベーション」が存在する。

A「プレイは上達するが、練習は大変」
B「プレイはそこまで上達しないが、練習が楽」

Aを選択することが、チーム活動に対するモチベーションが高いと一般的には言われる。
チームの練習に参加して、高い成果をあげる行動を選ぶということへの理由があることが、チームの練習へのモチベーションが高い、と言える。

チームづくりにとって大切なのは、
「チームの活動に参加し、チームとしての成果に貢献する行動を選ぶ」ことに対する「モチベーション」である。
チームに貢献しようとするモチベーションを「エンゲージメント」と呼ぶ。

モチベーションを科学する~気合いで人は動かない~

エンゲージメントを高める4P
・Philosophy(理念・方針) ・Profession(活動・成長)
・People(人材・風土) ・Privilege(待遇・特権)

4Pの全てを提供しようとすると、コミュニケーション、アサインメント、ゴールセッティングなどのすべてのコストを大きく負担する必要がある。
うまくいっている企業は社員にどんな魅力を提供し、また逆に提供しないのかという戦略が明確なので、
エンゲージメント向上に対する投資効率が非常に高いと感じます。
また、これらの企業がエンゲージメント戦略という点で素晴らしいのは、
働いたことのない私たちでも、
マッキンゼーはProfession、リクルートはPeople、ディズニーはPhilosophy
の魅力で束ねていると何となく感じられることです。(ブランディング)

エンゲージメントを生み出す方程式
エンゲージメント=報酬・目標の魅力(やりたい)×達成可能性(やれる)×危機感(やるべき)
WILL、CAN、MUSTに言い換えられる。

「メンバーのエンゲージメントを高めるためにはリーダーが情熱的に語りかけることが大切だ」
というのは完全に間違っているとは言えませんが、より重要なのは
「メンバーのエンゲージメントを高める方程式をチームに埋め込むことが大切だ」
という考え方です。

今の人は「感情報酬」で動く
企業経営において、社員のエンゲージメントの重要性が非常に高まってきている。
企業が見るべき、商品市場(顧客)、資本市場(投資家)、労働市場(人材)の中でも労働市場適応の重要性は高まる一方である。

エンゲージメントの4Pは大きく2つに分けられる。
金銭報酬や地位報酬に位置づけられるPrivilege
感情報酬に位置づけらえるPhilosophy、Profession、People
感情報酬(理念への共感、仕事のやりがい、仲間との繋がり等)は目に見えにくい。
時代の流れとして感情報酬の影響力が高まり続けている。
社会全体が物質的に豊かになり、エンゲル係数(支出に占める食費の割合)が下がり続けている中で、
多くの人が仕事に対して、物質的な豊かさだけでなく精神的な豊かさを求めるようになった。
給料をもらっているんだからつべこべ言わずにやれでは、通用しない。
なぜならば多くの人が給料のためだけに働いているわけではないから。

特別収録 チームの落とし穴

自分一人くらいという落とし穴(社会的手抜き)
3人で10時間かかる草むしり、10人でやれば3時間で終わるはずが3時間以上かかってしまう。
「自分一人くらいやらなくて大丈夫だろう」と思ってしまうから。
この落とし穴にはまらないためにはメンバーの「当事者意識」を高める必要がある。

当事者意識を埋め込む3つのポイント
・人数
チームの人数は少なければ少ないほど良い。

・責任
責任が曖昧だと当事者意識が下がる。
責任範囲と評価対象を明確にする。

・参画感
自分とは関係ないところで意思決定が進むとチームのことが他人ごとに思えてくる。
多数決や合議という意思決定手法を適宜取り入れることで参画感を持たせる。

あの人が言っているからという落とし穴(社会的権威)
独裁の間違った運用、意思決定者に情報が共有されない、状況のおいて発生しやすい。
チームの中に「議論」というプロセスを埋め込むことが重要。

あの人よりやっているからという落とし穴(参照点バイアス)
本来100のパフォーマンスを出せる人が、となりの人が60のパフォーマンスしか出していないので自分も60でいいかと考えてしまう。
この落とし穴にはまらないためには、チームの中で基準を明確にすることが重要。
阪神タイガースは勝てない時期ファンからの人気があり甘えた状態となっていが、
トリプルスリーの金本選手のストイックな姿勢を見ることにより、
チーム全体の基準が変わり、選手全体の野球に取り組む姿勢が変わり、チーム全体の成績も変わっていった。

最終章 私たちの運命を変えた「チームの法則」

売上という成果目標が目的化し、意義目標である組織への変革への意識が低くなっていた。
リピート率という成果目標は売上以上に「変革」という意義目標に合致したものだった。
チームメンバー全員が自分「取扱説明書」を作成した。
チームの中では月に1回モチベーショングラフを共有するようにした。
本当に顧客にニーズがあり、競合と差別化でき、自社のノウハウを活かせるメニュー以外はすべて廃止にした。

四半期ごとに丸2日かけたキックオフを実施。ミッションやビジョンを実現するために、どれくらいの業績を実現しなければいけないのか?その業績を実現するためにはどのような戦略に取り組むべきなのか?というビジョン・ミッションと業績・戦略との繋がりを徹底的に議論し、落とし込んだ。

メンバーのエンゲージメントが低いまま走る続けるチームは、すり減ったタイヤで走り続けるチームである。